先日、冬鳥を観察に行った帰りに、埼玉県内の国道を通った時のことである。フロントガラス越しに頭上を横切る鳥の群れが見え始めた。カラスだ。だが、なんとなく尾が短い。その時、運転していた共同研究者が「電線!」と叫んだ。見上げると電線にずらりとカラスが並んでいる。私は窓にへばりつくように見上げ、小柄なカラスが混じっていることを確認した。「コクマルいます!」と告げると、ドライバーは国道を外れて左折し、裏道を通ってカラスが止まっていたあたりまで車を戻した。そこで見たのは、久しぶりの、冬の使者だった。ねぐらに戻る途中のミヤマガラスとコクマルガラスが集団で電線に止まり、休憩している。彼らは冬になると日本の田園地帯に飛来し、越冬する冬鳥だ。ミヤマガラスはハシボソガラスより少し小さく、コクマルガラスはうんと小さくてハトほどでしかない。個体数、成鳥/幼鳥比などを数えていると、ミヤマガラスたちは「からら」「からら」と鳴きながら次々に飛び立ち、ねぐらへ向かって行った。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)