JP Tower Museum INTERMEDIATHEQUE
HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

劇場という教育現場

 9月に訪れたウプサラ大学博物館「グスタヴィアヌム」の建物は1620年代にウプサラ大聖堂の真向かいに建てられ、3世紀に亘って増築された。建物の象徴は、それとわかるドーム型の屋根である。そこには、1662年にオラウス・ルドベック(1630-1702年)によって構想された「解剖劇場」がある。今でもグスタヴィアヌムの玄関から石畳の階段を屋根裏まで上ると、来館者を唸らせる空間が見えてくる。中央に配置された解剖台を囲むように6列の階段席が段々にそびえている。階段席といっても、座る場所はないほど窮屈である。そこでルドベックらが一般公開の解剖を行うなか、階段席に立つ学生たちは吐き気を抑えつつ勉強し、最上階の特別席では上流階級のマダムらがパフォーマンスを観覧していた。解剖劇場の音響も特殊である。解剖台周辺の音は全空間に響くが、階段席から質問があったとしても中央からはよく聞こえない。インターメディアテクにも階段教室「アカデミア」が設置されている。教育現場の建築を考えるよいきっかけとなった。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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