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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

建築の記憶

 建築の記憶を一つの造形物にまとめたらどうなるか。その実験試行として制作した模型である。古代エジプトから現代までのさまざまな建築を立体的にコラージュし、3Dプリンタで出力している。カルナック神殿、パンテオン、ランス大聖堂、東大寺南大門、桂離宮書院、サヴォア邸、森山邸など作者の記憶に残る内外30以上の建築が、おおむね古い順に下から組み上げられた。ファサード、外観形態、内部空間、骨格構造といった、その建築の特徴的な部分を縮尺1/300で表現している。建築単体を再現した「縮小模型」、建築の部分を抽出した「空間標本」に続く、建築を集成統合する第三の模型表現の試みである。ここで選択された建築群は、建築史の流れを網羅的にカバーするものではない。しかし時代の推移とともに、建築の物象においては量塊的なものから繊細なものへ、空間においては閉じたものから開かれたものへ、という大きな変化の流れが見えてくる。(模型『建築の記憶』は東京大学総合研究博物館小石川分館で常設展示中)

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

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