キュー王立植物園より28点の植物画を借りて、展示を行うことになった。植物園というと、緑あふれる憩いの場を想像する人も多いに違いない。しかし、キューがキューたるゆえんは、大規模な研究機関として存在感を示し続けていることにある。古くから植物に関する豊富な資料を蓄積してきており、植物画もその一部である。植物は、乾燥させて標本にすると、本来の色彩や立体感を失う。乾燥標本も情報を残す貴重な手段であり、見た目にも美しいとはいえ、「植物の素顔」を後世に伝えようと思うなら、植物画家の技に頼らざるを得ない。白の紙を背景とするなど、一定のルールに基づき、紙面という限られた空間に、どう植物を配置し情報を散りばめるか、そこが工夫のしどころである。「生きている植物」をいきいきとした姿で伝えるのが植物画だ。本展の図録表紙やポスターに使われている、著名な植物画家ゲオルク・ディオニシウス・エーレト(1708-1770)のチューリップ図を見れば一目瞭然だろう。まさに平面から飛び出して来んばかりではないか。
秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)